「理事長が不正に予算を計上してお宝をコレクションしている…?」
それは生徒会から園芸部に持ち込まれた一つの依頼だった。
かつては部に伝わる代々謎であった華を咲かせたり、
鹿と人間を掛け合わせたバイオ鹿を生み出して
世界を混沌に陥れようとした園芸部であったが、それも今や昔。
学園の生徒数は増加する一方だが、魅力的な部活動の増加・園芸部という地味さからかつての栄光は完全に消え失せていた。
今では少ない部員と一握りの予算での活動を強いられていた。
その一握りの予算も既に使い切ってしまい、
素寒貧の無一文爪に火を点す部活動であった。
何にするにしても先立つものが無ければ始まらないのだ。
そのため現在の園芸部は学園生徒内から依頼を募集し、
依頼を遂行して報酬という形で少しばかりの金銭を受け取っていた。
謂わば学園内の何でも屋の様な存在。それが園芸部の現状だった。
「で、わたしたちにどうしろと?」
「ええ、パッと行ってさっと盗ってきて欲しいのです。
簡単でしょう?」
そして手渡される一枚の紙、
そこにはとにかく仰々しい豪華そうな名前がいくつも並んでいる。
進化の秘宝、幸運のかけら、生命の神秘……… よくわからない。
「理事長はかなりの用心深さで、
他人からは分からないような名前を付けているらしいんですよ。
しかも贋作まで大量においてあるらしいですし。
更に蔵自体に警報装置が二つも付けられているらしいのです。
蔵の中で一定以上の歩数を歩くと作動する警報装置と
時間ごとに操作しなければ発動してしまう警報装置らしいのです。」
なんだそれは、難攻不落なんてもんじゃないだろう。
「もちろんロハとは言いませんよ、依頼ですからね。
成果に応じて追加予算を付けましょう。」
こうしてわたしたちは部活動存続のため、盗賊になった。